実行委員長あいさつ

49回の積み重ね

重みを感じつつ、軽やかに新しい風を

大会実行委員長・関西支部長

竹内 理

(関西大学)

来る8月4日(火)から6日(木)まで、神戸市西区の流通科学大学において、「外国語教育のパラダイム:認知、脳、社会文化の統合に向けて」をテーマに、第49回全国研究大会が開催されます。いろいろなパラダイムやアプローチが交差(あるいは交錯)する外国語教育学の分野において、それぞれのパラダイム・アプローチをよく知り、そこから統合的な知見を引きだす可能性を探ろうという意図で、今回のテーマは設定されています。関西支部では、おおよそ1年半前より支部の力を結集して今大会の準備を始め、プログラムを練って参りました。ここでは、その一端を会員の皆さんにご紹介したいと思います。

まず、大会の背骨となる3つの基調講演(大会テーマのキーワードに連動しています)には、世界的に著名な研究者の参加を得ることができました。「認知科学」の分野では、カナダ・ヨーク大学のエレン・ビアリストーク教授が本大会のために来日されます。同教授は、バイリンガリズム、メタ言語知識と第二言語習得、子どもの読み書き能力の習得、コミュニケーション方略研究などで世界的な権威として知られており、6冊の専門書と100編以上の論文を公刊されています。このうち、In Other Words: The Science andPsychology of Second Language Acquisition (Hakuta, K.との共著)は『外国語はなぜなかなか身につかないか:第二言語学習の謎を解く』(新曜社)として邦訳・出版されています。「脳科学」の分野では、東京大学大学院の酒井邦嘉先生をお迎えします。同先生は、fMRIを駆使して脳と言語の関係性の解明に挑まれており、Science などの国際研究誌に「文法中枢」に関わる研究などを次々に発表しておられます。また、一般書(中公新書より)として『言語の脳科学』や『科学者という仕事』(研究を志すものの心を奮い立たせる良書です)なども執筆されています。3つ目の「社会文化」の分野では、大阪大学大学院の西口光一教授をお招きしました。同教授は、ヴィゴツキアンの立場から日本語教育を推進されており、凡人社から出版された『文化と歴史の中の学習と学習者』は、社会構成主義的アプローチの具現体として、広く注目を集めています。

LETの全国大会といえば、ワークショップの充実ぶりも大きな特色といえるでしょう。今大会も例外ではありません。ここでは、参加者のみなさんに、いろいろなパラダイムやアプローチに基づいた教室実践や教材作成、調査手法を体験していただき、それぞれに理解を深めていただくことが狙いとなります。各講座で扱われるトピックは、 “Task-based Language Teaching”,「音読・シャドーイング」、「教師の質問力」、「英語ノートの活用」、「スピーチ入門」、「リスニング教材とテスト作成」、「授業実践データの解析」と実に多岐にわたっていますが、参加者のみなさんを大いに刺激するという点は、すべての講座に共通しています。すでに受付も始まっておりますので、ホームページからお早めにご予約下さい。

研究大会のメインはなんといっても、研究発表・実践報告でしょう。今回の大会には、最終的に100件をこえる申し込みを頂きました。厚く御礼申しあげます。内容も、メディア・CALLの利用、第二言語習得、認知処理、音声指導、教授法改善、教室実践、学習者心理、教員研修、小学校英語と幅広く、来年には50周年を迎える本学会が、応用言語学の全領域を包括する学会へと発展している姿を確認できるものとなっています。今回は、公募シンポジウムも同時に開催されますが、こちらの方も、「脳科学と第二言語習得」、「教員研修とメディア・リテラシー」、「小学校英語」、「リーディング研究」、「教授法と小中連携」、「動機づけとプロジェクト型学習」、「認知、脳、社会文化の統合」など、大会テーマに沿った魅力あふれるものになっています。

また賛助会員のみなさんによる展示も、例年同様、充実したものになりそうです。本大会では、「スタンプラリー」を導入する予定で、一定数の展示ブースを回り、機器や教材等の説明を受けられた参加者のみなさんには、ノベルティ・グッズを用意するなど、お楽しみも用意しています。ぜひ、奮ってご参加ください。

関西支部では、「学会」=「楽会」の精神で、ホスピタリティに関しても力を注ぎながらこの大会を企画してきました。たとえば、大会開催時期は1年でもっとも暑い季節ですので、参加者の皆さんに少しでも快適にお過ごしいただけるよう、清涼感が感じられる工夫を随所に用意させていただきました。また、懇親会(こちらも充実しています)以外にも神戸の食を満喫頂けるよう、インド料理、南米チリ料理、ベトナム料理、イタリアン、スペイン料理、韓国料理、そして和食と、色々なお店の紹介をホームページで公開中です(中にはワンドリング・サービスを提供いただけるお店もあります)。ぜひ本大会にご参加いただき、お昼は頭と心を、そして夜にはお腹をいっぱいにしていただければと思います。

49回全国研究大会の魅力をかいつまんで紹介させていただきましたが、大会を真に盛り上げるためには、会員のみなさんの積極的なご参加が一番肝心かと考えております。8月のお忙しい時期とは存じますが、どうか1人でも多くの会員のみなさんに神戸の地を訪れていただけますよう、大会実行委員一同、心よりお願いする次第です。